「TAKE IVY① TAKE IVYと僕物語」

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「言わずと知れた」という言葉も擦り切れるほど解説され尽くしたTAKE IVY。アイビーファッションのバイブルとして、魂として、約半世紀近くも読み継がれてきた。そんな一冊を、あえて今さら紹介したい。

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と、意気込んでおいて申し訳ないけど、まずはじめに僕とTAKE IVYの出会いの話をちょっとだけ。

今から十数年前、服飾の専門学校を卒業後し、ノリと勢いだけで友人と二人でブランドを立ち上げた時のこと。最高にカッコいいファーストコレクションができたと自信満々で展示会を開いたはいいものの、何人かの友人がお情けで買ってくれた以外受注はゼロ。所詮素人に毛が生えたような僕らが作るものなんてこの程度か。そう諦めかけていた最終日、とあるセレクトショップのバイヤーが興味を持ってくれた。結論から言うと取引には繋がらなかったのだけど、その人のこの言葉で、大袈裟ではなく本当に人生が変わった。「君たちそんな若いのにすごいトラッドな服作るんだね!面白いね!」。正直言って、僕らはこの時トラッドな服を作っているという意識なんて全くなかった。ただ、これで失敗の理由がはっきり分かった。
「トラッドを知らない人間が作るトラッドな服なんて絶対に売れない」。
その日帰ってすぐにトラッドとアイビーを調べ、検索の一番上に出てきたのが、そう、TAKE IVYだった。当時からすでに高価な本だったが、これを読まなきゃ先に進めないような気がして、迷わず買い、二人で電車の中で読んだ。10分くらい無言でページをめくっただろうか。最後のページを閉じ、隣に座る友人と顔を見合わせ、同時に出た言葉を今でも鮮明に覚えている。「いや、これ、カッコいいのか?」

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アイビーのバイブルだの魂だの仰々しいことを冒頭で書いておきながら、僕がTAKE IVYを最初に見た時の素直な感想がこれだ。特に英語版を買ってしまったもんだから、写真の情報しかなく、全く理解できなかった。
だって冴えない学生が、ただただ食堂に並んでいるだけの写真だよ?
おそらく、トラッドやアイビーの知識がない人が見たら、同じ感想になると思う。もしそれでもカッコいいと感じたら、残念ながらあなたのセンスはおかしいです。

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しかしご安心を。この本はちゃんと理解した上で見たら、本当に面白いから。
これから何回かに分けて解説(というか小話を)していこうと思うので、アイビー好きは昔話にニヤリとしながら、アイビー初心者は新しい発見にワクワクしながら読んでもらえると幸いです。