「TAKE IVY② VAN JACKETとIVYの蜜月」

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そもそも、TAKE IVYとは何なのか。
それを解説するためには、アメリカンカルチャーの前にまず、日本のアパレル企業「VAN JACKET」について語らなければならない。

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ブランド概要や会社の変遷はウィキペディアに詳しいので省略させてもらうとして、一言でいうとこの会社は、60年代の日本を牽引した「エンターテイメントクリエイティブカンパニー」だった。アパレル企業とは書いたがその事業は多岐に渡り、劇場やスナック、インテリアショップの運営をはじめ、映画制作やファッション誌のディレクション、果てはテレビ業界にまで進出。その背景にあったのが、圧倒的ブランド力を誇り、日本中を席捲したアイビーファッションブランド「VAN JACKET」である。

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60年代初頭、日本の若者はアメリカを求めていた。
テレビの中だけで見る本物のアメリカに憧れ、少ない情報をかき集め、必死で偽物を着飾り、どうにか欲求を満たしていたのだ。
そんな中突如「本物のアイビー」がメンズクラブに掲載される。テレビで見たブレザーが、ボタンダウンシャツが、どうやら青山のショップで買えるらしい。そんな噂は瞬く間に広がり、VANは連日長蛇の列ができる人気ショップとなった。当然日本のブランドなので、正確にはVANも偽物のアイビーである。ただ、とにかくPRが秀逸だった。ありとあらゆるメディアを巻き込み、センスの冴え渡るクリエイティブ作品を次々と生み出し、いつしかVANは「本物のアイビー」以上のアイビーファッションブランドへと成長していった。

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もうお気づきだろうが、そのPRの一環として出版社された写真集、それがTAKE IVYである。
ただ、当初の目的は写真集の制作ではなかった。アメリカの大学に通う若者のリアルなライフスタイルを切り取ったドキュメンタリー映画「TAKE IVY」撮るために、遥々海を渡っていたのだ。この映画撮影のついでに撮ったスナップが、たまたま良かったので同名の写真集版「TAKE IVY」も出版しちゃいました。というのが表向き。でも、そんな訳はない。この写真を撮ったのは、メンズクラブの表紙などで当時すでに写真家として確固たる地位を築いていた林田昭慶氏。映画とは関係のない彼をわざわざアメリカまで連れて行き、ついでやたまたまなんてあるだろうか。流石にここまでのベストセラーになるとは予想していなかったと思うが、狙っていたのだ。映画と写真集とVANを絡めた壮大なムーブメントを。

この他にも数え切れないほどの伝説を残したVANだったが、時代の波に飲まれ、1978年、その幕を閉じる。
これでアイビーの炎は消えた…かのように思えた。

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2000年代に入り、アイビーは再びかつての輝きを取り戻すこととなる。それも、本場アメリカで。
トムブラウンやマークマクナイリーら気鋭のデザイナー達が、独自の解釈を加えたアイビーファッションを次々と発表したのだ。
アメリカ人がアメリカの服を作る、それは当然のことである。だた、彼らがこぞって手にしていたのは、アメリカ生まれ日本育ちの、TAKE IVY。60年代の日本の若者が熱狂した「本物のアイビー」が、そこにはあった。